漢方について

身近な症状と治療の実際9 【その他】

特徴的な症状と処方

こむらがえり

 こむらがえりは主にふくらはぎの筋肉のけいれんを意味しますが、同様の症状は、足底の筋肉や手指の筋肉あるいは、大腿(ふともも)や腹部の筋肉にも起こることがあります。

 運動中や睡眠中に起こることが多く、電解質バランスの乱れや脱水などとの関連が言われていますが、原因は正確にはわかっていません。こむら返りの予防としては、冷やさないこと、運動の前後のウォーミングアップとクールダウンをしっかりおこなうこと、日常の入浴時などにマッサージをおこなうことなどがありますが、漢方では『芍薬甘草湯しゃくやくかんぞうとう』という処方がこむらがえりの特効薬として知られています。このお薬は、「芍薬」と」「甘草」というたった二つの生薬を約1:1の割合で混合して煎じたものですが、特に漢方的な「証」を考慮しなくとも、ほぼ90%以上のケースに有効とされています。服用方法としては、運動の前あるいは後に一回だけ、あるいは寝る前に1回の服用で十分予防が可能です。たとえば、ゴルフの最中にこむら返りをよくおこす方はプレーの前の晩と当日の朝に飲むことをお勧めします。

 ただ、この処方は、「甘草」の量が多いので、むやみに長く飲み続けると「偽アルドステロン症」が起こる可能性もあり、注意が必要です。

雨の前の頭痛、月経前の頭痛、冷えによる頭痛

 頭痛の原因は様々ですが、現代医学では片頭痛 緊張型頭痛 群発頭痛などの一次性頭痛と、外傷や脳血管障害、脳腫瘍などによる二次性頭痛に分類されます。軽い頭痛だと思って放置していたら実は脳腫瘍だった、などということもありますので、一度は医師の診察を受けるべきでしょう。西洋医学的に重篤な病気が隠れていないケースであれば、漢方が有力な治療手段になることも稀ではありません。特に、低気圧が近づいてきたり明日は雨が降りそう、という時に必ず頭が痛くなる、という方には、『五苓散ごれいさん』がお勧めです。

 五苓散は体内の水の流れを調節し、余分な水分を体外に排出する働きがあり、頭痛の他にも、めまいや嘔気に用いられます。

 また、月経前の頭痛や風邪をひいた際の頭痛には『川キュウ茶調散せんきゅうちゃちょうさん』が、体が冷えて頭が痛くなるというようなときには、『呉茱萸湯ごしゅゆとう』がよいでしょう。

眼精疲労

 ほんの一昔前の仕事といえば、一日机の前で書類と格闘して・・・というのが決まり文句でしたが、最近は、一日パソコンとにらめっこ、というのが日常的なパターンになったようです。それに加えて、通勤途中では携帯の画面に見入り、家に帰ればテレビを見ながら食事をしたり・・・・現代人は1日中、目を酷使しています。目の疲れ(=眼精疲労)によく使われる漢方生薬としては「クコ子(=クコの実)」が有名です。クコ子は目に良いとされるビタミンAやB1を多く含み、中国料理や漢方薬膳の材料としても用いられます。

 処方としては、同じく目の疲れをとる作用のある菊花(菊の花びら)を一緒に配合した『杞菊地黄丸こぎくぢおうがん』が有名ですが、普段の食事のなかでも、スープや粥にクコ子を入れて食してみるのもよいでしょう。

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